2023年12月5日 • 所要時間:約10分

耳の不自由な人も大切なチームの一員(パート1)

Mikomaxが強固なインクルーシブ文化を創造する方法

by Alex Przybyla

MikomaxはHushofficeブランドの資金提供および製造主力企業であり、世界的なアコースティックポッド市場で急速な成長を見せています。また、Hushofficeはヘイワース ブランドファミリーに新たに仲間入りした企業です。Mikomaxの本社は、ポーランドでテキスタイルやシネマで名高い都市であるウッチに位置しています。

Mikomaxは30年以上にわたり(実質上創立以来から)、耳の不自由な従業員を製造チームの一員として迎え、活躍の場を提供してきました。この度ヘイワースは彼らの取り組みやアプローチを学ぶべくMikomaxを訪れ、コミュニティと交流し、彼らのインクルーシブプログラムに関する学びを深めました。今回の訪問では製造ラインのメンバーや人事ディレクター、プロジェクトチームマネージャー、工場主任、管理取締役会メンバーなど企業内の幅広い人材と話を交えることができました。

ポーランド手話について

Mikomaxで活躍する耳の不自由なチームメンバーが使用しているポーランド手話(PJM)には興味深い歴史があります。PJMは発話されるポーランド語とは異なるもので、他の多くの言語と同様にその豊かな歴史は今では多くの謎に包まれるものとなってしまいました。手話は「話す」ものか、あるいは「使用する」ものか、手話は世界共通の言語かどうか、お住まいの国で最も使われている手話言語は何かなど、手話に関するさらに詳しい情報は、ヘイワースの手話に関するFAQをご覧ください。 

「声」で話す言語と「手」で話す言語の魅力

すべての言語に、素晴らしい美しさがあります。手話の素晴らしさは、健聴者のコミュニティには気付かれないことが多くあります。手話は実際には世界中のあらゆるコミュニティで発展し続けており、豊かなイディオム・熟語にあふれ、洗練された巧みなジョークも広まっています。若い世代は略語を用いたり、スラングを生み出したりしています。手話は急速に進化・展開し得るもので、時には自然と革新的な発展を遂げたり、他の手話から便利な表現や言葉を借用したり、さらには現地の発話言語要素を借用する場合もあります。

多くの場合、耳の不自由な人たちのコミュニティを社会から切り離し取り残してしまう原因はコミュニケーションの壁にあります。しかし、こうした壁や障害は決して乗り越えられない課題ではありません。Mikomaxはそれを何十年にもわたって証明し続けています。しかし同時に、私たちはこうした障害の存在を否定することはできません。コミュニケーションの壁は自然と消滅するものではないからです。新たによりインクルーシブな何かをその場所に構築するめには、こうした壁を取り壊さなくてはなりません。

今回Mikomaxチームと対談し、彼らが確立したインクルーシブなコミュニティについて学ぶ機会が得られたことを、とても喜ばしく感じています。この機会を通して得られた主要な学びをひとつ挙げるとすれば、それは「インクルーシブなコミュニティは志向性や投資、努力を必要としており、結果として生まれるものは単なるビジネス以上のものである」ということです。インクルーシブなコミュニティは人類の発展にも貢献しています。そして人類の発展こそ、取り組む意味をもたらしてくれるものです。 

 

 

 

「手話は表現力あふれる言語です。表現がとても豊かなため、相手の不満といった感情的な側面も理解することができます。感情がありのまま現れる言語だと言うことができるでしょう。」

Irek Piątkowski

表現力あふれる言語と世代間の差異

IrekとMichałはMikomaxの製造マネージャーです。Irekは組み立て部門の主任を務めており、現在彼のチームでは耳の不自由な従業員が19名活躍しています。彼の耳の不自由な従業員との勤務経験は30年以上にわたり、手話も堪能です。

「手話は表現力あふれる言語です」と彼は述べ、次のように続けます。「表現がとても豊かなため、相手の不満といった感情的な側面も理解することができます。」 感情がありのまま現れる言語だと言うことができるでしょう。」

Michałは防音性のアコースティックブース製造部門の主任を務めています。現在彼のチームで活躍する耳の不自由な従業員は10名で、彼自身も中級レベルの手話を話すことができます。IrekとMichałはどちらも、手話が唯一のコミュニケーション手段ではないチームを率いています。

「私のチームは健聴者と耳の不自由な人の両方で構成されているため、私たちのコミュニケーション手段も混在しています。しかしメンバーとのコミュニケーション時に大きな障害を経験したことはありません。従業員はみな、直面する困難や課題を驚くほど素早く乗り越えることができるのです」とMichałは語っています。

「もうひとつ言及しておきたいのは、耳の不自由な方たちは極めて優れた読唇術を持っているということですね」とMichałは付け加えています。また彼は、表情や表情の真似も重要な要素であると説明しています。耳の不自由なチームメンバーとの手話による会話を数多くこなしてきたIrekとMichałは、ポーランド語を話す際、以前よりも表現豊かになったと感じることが時々あるそうで、これは仕事外でも当てはまることだと述べています。

「以前よりも少し表現力豊かになった自分に驚いていますよ!」 とMichałは笑い、「私もまったく同じです」とIrekも述べています。

発話言語と同様に、手話も急速に発展しており、世代ごとに新しいスラングを生み出し、表現は次第に変化し、適応して、略語も豊富に生まれています。

「世代間の違いや話し方の違いも見ることができるんですよ」と述べるIrek。「より年上の人は少し違った表現や異なる単語を用いたり、異なる手話の仕方をします。一方若い世代は言葉を切り詰めたり、文章を短くするんです。」

 

チームマネージャーに求められる手話の熟練度

耳の不自由なチームメンバーとの連携には手話がサポートとなります。それと同時に、コミュニケーションの方法は他にもあります。耳の不自由なメンバーがチームに入る前に手話を完璧に習得する必要はないのです。

「自分が手話を100パーセントマスターしているとは言いませんが」と述べるIrek。「でも、それほど問題無く手話を使うことはできます。一部の人は自分は十分な言語スキルを持ち合わせていないと最初は思うかもしれませんが、こうした当初の不安はすぐに消えて無くなります。」 何度も練習することで、手話の能力を高めていくことができます。「私は3年間にわたって耳の不自由な従業員のみと仕事をすることで、自身のスキル向上のために自分を追い込む機会を得ることができました。」

Michałは、耳の不自由な人と健聴者の両方にとって明確であり、両者にとって便利な視覚的コミュニケーションの重要性を強調しています。「特に私たちの製造プロセスの実施方法について考慮した際には、視覚化を目指しますね」と彼は述べ、次のように続けています。「私たちは行っている業務すべての視覚化を目指しています。これにより誰もが平等の機会を得ることができます。つまり、耳の不自由を問わずすべての人材が業務を素早く理解することができるのです。」

新しいテクノロジーは、特に異なる手話言語を話す耳の不自由なメンバー間でのコミュニケーションプロセスに役立っています。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、Mikomaxはウクライナメンバーをチームに迎え入れています。翻訳デバイスといったテクノロジーは、言語の壁の克服に貢献しています。

「私たちはチーム内にも複数の国籍が存在しています。手話言語間では、例えばポーランド手話とウクライナ手話の間には違いが存在するため、私たちは複数の翻訳デバイスを購入しました。これによりポーランド語からウクライナ語に大まかに自動で翻訳する力を得ることができ、こうした言語間の課題を乗り越えることができたのです」とMichałは語っています。

頭、手、心を使う言語

Mikomaxが実現している耳の不自由な従業員のためのインクルーシブな環境は、Sławomir Szachmytowskiが5年前にMikomax工場のマネージングディレクターとして採用された際に彼に嬉しい驚きをもたらしました。

「耳の不自由な人とのコミュニケーションは、私にとって何の問題もありません。実は私の両親も耳が不自由なのです」と語り、次のように続けています。「このため、Mikomaxの製造部門に来て勤務し始めた時、Mikomaxが耳の不自由な人を採用していることを知ってとても嬉しかったです。私が彼らと手話で会話し始めた時、彼らはとても興奮して喜んでいるようでした。もちろん私もです!」

私たちの訪問は、3つの言語の駆使をSławomirにお願いするものとなりましたが、彼は見事にこなし、終始落ち着いていました。今日、彼は私たちの質問に回答するだけではなく、耳の不自由なチームとの会話を容易にすべく私たちの質問を彼らに伝えてくれています。しかも、場面に応じてPJM、英語、そしてポーランド語の3つの言語を素早く切り替えなくてはなりません。

耳が不自由なチームメンバーの中で最初に話を伺ったのは、Zbigniewです。彼はMikomaxで30年以上にわたって組み立てラインで活躍し続けています。(Sławomirが翻訳をサポートしてくれました。)

「数多くのことが変化しています」と述べるZbigniew。「私たちは新しい製品を製造し、常に新しい顧客を得ています。」 Zbigniewは彼のマネージャーについて、「最高の存在です。コミュニケーションを取ることができますから」と手話で語ってくれました。彼がそう述べているところ、馴染みのある顔が通りかかりました。Zbigniewのマネージャーであり、今朝我々がインタビューしたIrekです。

「耳の不自由な人たちと話始めると、自然と手話を使うようになるんです」とIrekは笑いながら語っていました。ZbigniewとIrekは30年にわたって共に仕事をしてきたのだと、Sławomirは教えてくれました。苦楽を共にしてきたチームメンバーです。

またSławomirは「現在ではとても素晴らしいコミュニティの中にいます」と述べています。

彼は5年後に退職する予定であることを述べた上で、今の仕事が気に入っているためまた戻ってくるかもしれないと語っていました。

 

障害を乗り越えるためのアドバイスと、意見が分かれるお気に入りのサッカー選手

次回はRoberrtとMichałからお話を伺います。Robertは以前12年間Mikomaxに勤務していましたが、短期間離れ、再びMikomaxに戻り、現在まで4年間活躍しています。Michałはこの企業の一員となってから1年が経ちます。

RobertとMichałは、耳の不自由な人のコミュニティにおけるコミュニケーションは容易であるとし、RobertはMikomax以外の企業で働く間、Mikomaxでのようにリーダーやマネージャーと手話で話す機会がなかったことに言及します。またSławomirは、マネージャーは手話のトレーニングコースを受けたり、試験に合格しているのにもかかわらず、手話で話すことを難しいと感じることが多いと説明しています。(こうしたコースについてはパート2で詳しくご紹介します。)

私たちは耳の不自由な人と健聴者間のコミュニケーションの壁を乗り越える方法について尋ねました。

「耳の不自由な人と話す際は、ゆっくり話す必要があります」とRobertが述べ、Sławomirが訳してくれました。Robertは言葉を発音する際、口で強調しながら話すことを推奨しています。

「私たちはツールのために適応させたものや、行う業務に合わせたサインなど、小さなサインを使うことができます」と述べるMichał。オンラインでのコミュニケーションも容易で、Facebookメッセンジャーが推奨ツールとして使用されています。(メッセンジャーはオンラインデートのアプリとしても好まれているようです!)

サッカーの話題になると、Irekが先ほど述べていた世代間の違いが激しくなります。RobertとMichałがどちらも地元のウッチクラブを応援していますが、私たちがお気に入りの選手について尋ねると、Robertは最初にLewandowskiを選びましたが、一世代前の選手であるBonekやTomaszewskiなどに素早く変更しました。Michałは間髪をいれずにMessiとMbappeを選んでいます。どちらかを選ぶように言うと、彼はMbappeを選んでいました。

「彼の方が若いからね!」 と述べるMichał。

素晴らしい体験の前半が終了

私たちのMikomax訪問の前半では、チーム内の誰もがお互いを知り、誰もがチームの一員と感じられるような、専門的でありながら穏やなチームの雰囲気を体験することができました。一言で言うと、とても居心地の良い場所です。

今一度、ここでポーランド手話からポーランド語、英語へと絶え間なく翻訳してくださったMikomaxチームの素晴らしい翻訳スキルに感謝を述べたいと思います。彼らのおかげで耳の不自由なメンバーと話し合い、彼らの体験を伺うことができました。また、私たちはポーランド手話の初級用語をいくつか学ぶことができました(そして私たちのリクエストに応えて、教えていただいた単語の一部はもう少し「楽しい」ものになっています)。

今回の訪問では、インクルーシブなコミュニティの一部を体験することができました。

パート2では、Mikomaxの役員であり創設者のご子息であるMaciej Mikołajczykからお話を伺います。インクルーシブな文化は企業の歴史に根差しており、Maciej以上にその歴史をよく知る人物は他にいません。さらに人事ディレクターであるPaulina Wieczorkiewiczからもお話を伺い、Mikomaxがインクルーシブ文化を促進するために行っているイニシアチブについて詳しく見ていきます。

今回のパート2では、人事ディレクターとMikomaxの役員メンバーからお話を伺い。

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