2023年8月1日 • 所要時間:約8分

実践的な循環性

ヘイワース Cardiganのストーリー

by Alex Przybyla

終わりのないサステナビリティジャーニー 

サステナビリティにおいて完全なゴールというものは存在しません。なぜなら製品は常に改善し続けることができ、新しい素材や技術、さらにはプロセスが日々誕生しているからです。製品が到達し得る可能性を考えるとこれはとても喜ばしいことのように感じられますが、終わりのない取り組みを考えると気後れしてしまうものでもあります。完成したデザインの先には、常に新しい製品やプロセス、新たな章が待ち受けています。  

お気付きの通り完璧なソリューションというものは存在しませんが、気候危機において「完璧さの追求」は本当の目的の実現を妨げてしまうものとなりかねます。完璧なものを待ち望んでいる人たちは、今後も長い間その実現を待ち続けることとなるでしょう。クリーンな経済を生み出すための近道は存在しません。長い旅路を着実に歩んでいく以外、他に方法はないのです。どんなに長い道のりであっても、あるいは長い道のりであるからこそ、私たちはこれまでの成果を振り返り、その功績を称える必要があります。次のステップが常に最も重要であるのは確かですが、これは過去を振り返る必要がないということを意味しているわけではありません。一度立ち止まり、今までの取り組みを再認識することも重要なステップなのです。  

 

ヘイワース Cardiganの実現を振り返って 

ヘイワース Cardiganは数多く展開する製品の中でもとりわけ特別な意味を持つコレクションです。現在(2020年代前半)で利用可能なノウハウと原材料を駆使したこのモデルは、ヘイワース史上最も循環性の高いラウンジチェアです。このチェアのために厳選した原材料、そして考え抜いた製造プロセスのすべてが、誇りとなるような製品となりました。  

循環型経済はヘイワースが掲げる2025年のコミットメントのひとつです。私たちが目標としているのは、新しい製品の100%を循環型デザイン方針を用いてデザインすることです。(ヘイワースの循環型アプローチに関する詳細、そして2022年CSR(企業の社会的責任)報告書(特にp29〜34参照)はこちらからご覧ください。) 現在利用できる最もクリーンな原材料の使用を各製品で目指し、利用者の元では思いやりとサポートを提供する一方で、寿命時には可能な限り環境にやさしい製品となるようデザインしています。  

コンセプトとデザイン:「使い残し」のない製品

名高いデザイナーであるPatricia Urquiolaは、ヘイワース Cardiganを「使い残しが一切ない製品」として表現し、長いサステナブルジャーニーの標石のひとつとなるラウンジチェアであるとしています。(この使い残しを出さないという特徴の大半は、必要な形に合わせてニットを編む3Dニット素材によって実現されています。)

そして、老子はかつて「善く行くものは轍迹(てっせき)なし-上手に歩く人は足跡を残さない」と述べていました。一企業として、そしてグローバル社会の一員として、私たちの目標は製品とその製造プロセスにおいて循環性を実現することです。循環性に配慮した製品は、廃棄物を生み出しません。社会的に取り組む点はまだたくさんありますが、こうした製品は目標達成に向けて私たちを少し前進させてくれるものです。 

では実際に、ヘイワース Cardiganはどのようにしてこれらを実現しているのでしょうか? 各素材を詳しく見ていきましょう。  

当社の2025年のコミットメント

循環経済を支え、人々、コミュニティ、そして地球にとってより良い世界を作る。ヘイワースがいかに社会に果たすべき責任に対しての取り組みを行っているかご覧ください。

ヘイワースのサステナビリティマネージャーであるJessica Karpに、ヘイワース Cardiganが当社で最もサステナブルなラウンジ製品である理由を伺いました。ヘイワース Cardiganのチェアはスチール製フレームと脚、ニット素材、プラスチック製シートシェル、フォームシートパッド、そして6本のメタル製ネジによって構成され、各部品は循環型方針を採用して設計されています。

 

接着剤不使用

接着が最初の課題であったとJessicaは述べています。彼女は「製品全体からあらゆる接着剤の使用を取り除きました」と述べ、これは「ラウンジポートフォリオ内で初の試み」であるとしています。すべての接合はリバーシブル可能。チェアの組み立てに必要なのは6本のネジのみ。組み立てに要する時間はたった10分。(つまり組み立てそのものが簡単というボーナス付き。) 

 

必要な形に合わせてニットを編むことで廃棄物を削減

ヘイワース Cardiganに使用している素材は、3Dニットプロセスによって製造されています。「裁断や裁縫といった作業は一切ありません」とJessicaは述べ、次のように続けています。「ニットはラウンジチェアのサイズに合わせて製造されているため、一貫して廃棄物が一切生まれません。」 この3Dニットプロセスは、Patricia Urquiolaが「使い残しが一切ない製品」として表現する理想にぴったりと当てはまる方法なのです。 

 

バイオマスバランスフォーム 

フォームに使用されている製造プロセスはとても興味深いものです。「私たちはバイオマスバランスフォームを使用しています。これはつまり、フォームの製造過程において一切の化石由来原料を使用していないことを意味します」とJessicaは説明しています。「化石由来原料の使用を完全に回避し、代わりに食品廃棄物などのバイオマスを使用する製品は、ヘイワース製品において初めてです。」 

フォーム本体の素材は化石由来原料を使用して製造する際と同一のものですが、バイオマスを燃料源とすることでエンボディド・カーボン(含まれるカーボンの割合)を従来のフォームより80%も削減することができます。 

このプロセスはチェアのエンボディド・カーボン全体を約11%削減します。カーボンフットプリントが87.4kgというヘイワース Cardiganは、私たちが展開するラウンジチェアにおいてカーボン影響が最も低い製品となっています。 

リサイクル可能なリサイクル素材

循環性に配慮したデザイン用語において、リサイクルとは2本の柱によって支えられており、製品の始まりと終わり、つまり最初と最後のチャプターの両方を考慮しています。 

まずリサイクル素材が製品に使用されます。信頼できるサプライヤーと連携し、バージン原料(未使用原料)ではないリサイクルされた素材を調達します。こうして廃棄物となり得た素材を再利用することによって、世界から原料を得た製品が世界により良い影響をもたらすように徹底しています。ヘイワース Cardiganのニットはリサイクルポリエステルを100%使用しています。 

次に、リサイクル可能な素材とは製品が再び世界に貢献できる要素を考慮し、寿命時に製品が再び循環型社会に戻ることができるようにするものです。こうした製品の最終チャプターが訪れるのは何年も、何十年も先となることを願う一方で、この段階はすべての製品に必ず訪れるため、リサイクル可能な部品を調達することによって製品が埋め立て地や廃棄場で最後を迎えることがないようにします。これにより製品が世界へ再度提供できるものが、再び他の(循環型)製品に再利用される可能性を高めることができるのです。ヘイワース Cardiganのスチール製フレームは完全にリサイクルすることが可能です。プラスチック製シートシェルは、確立されたリサイクル供給経路を使用した一般的なリサイクルプラスチックであるポリプロピレンを使用しています。  

 

あなたの元に届くまで – パッケージングと配送

製品がもたらすカーボン影響の大半は、お客様の元に届けるまでの間に生じています。実際に配送する必要がある製品にとってこの影響は避けては通れない課題であり、現在私たちにできる最善策は、配慮あるデザインによってこの影響を最小限に抑えることです。ヘイワース Cardiganでは、パッケージング方法とパッケージ素材を考慮することによって物流上の影響を最小化しました。 

ヘイワース Cardiganは分解された状態で配送されます。外箱はスチール製フレームと脚といった単一部品の中で最も大きなサイズまで縮小され、その他の部品はフレーム内に収まるように配置されています。外箱の大きさを最小化することによって、より多くの箱がコンテナやトラック内に収まるようになります。完全にまたはほぼ組み立てられた状態で配送される従来のラウンジチェアと比較してCardiganの箱は驚くほど小さく、ヘイワースのポートフォリオ内でも最も小さく梱包されたラウンジチェアとなっています。フルトラック積載の標準比較を基準とすると、ヘイワース Cardiganの配送時に生じるカーボン排出量は、類似するラウンジチェアの最大3分の1となります。 

パッケージの素材にももちろんこだわりました。サステナブルな素材を使用した製品が使い捨てのパッケージ素材で包装されていることがあまりにも多く、本来の「環境にやさしい」というコンセプトから正反対のものとなってしまっています。ヘイワース Cardiganのパッケージにはボール紙のみを使用しています。使い捨てのプラスチックは一切使用せず、ボール紙は完全にリサイクル可能である上、リサイクル素材を100%使用しています。 

寿命と分解

循環性の一部は、リサイクルが始まる前の製品の寿命時にまで考えを巡らせることであるとJessicaは話しています。まず私たちは製品寿命をできる限り延ばすことを目指し、これは簡単に部品を交換できる設計により実現しました。「修理や使い古されたパーツの交換は簡単です」とJessicaは述べています。そして製品寿命時には、ヘイワース Cardiganは組み立て時と同様に素早く簡単に解体することができ、約10分ほどでそれぞれの部品を分解することができます。 

 

次の目標 

世界的にリサイクルフォームが辿る道のりは、メタルやプラスチックが辿ってきた道のりよりも明確ではありません。そして一般的にポリエステル素材は永遠にリサイクルが可能な素材ではありません。この2つの点は社会的にさらなる開発と発展が必要です。現時点では循環性の実現のために世界が辿ることができる一貫した道のりは存在しません。バイオマスバランスフォームは極めて優れたイノベーションで、個々の素材において80%ものエンボディド・カーボンの削減を実現するということは実に素晴らしい成果であると言えます。 

ヘイワース Cardiganラウンジは、ヘイワースが製造する中で最も循環性の高いラウンジチェアです。今後ヘイワースが実現していくさらなる発展にご期待ください。 

人々と地球をサポートする

2022年企業社会的責任レポートでより良い世界を目指すストーリーを詳しくご紹介しています。

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